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  • 退職を決めた日のことー10年の誇りと”ただの人”になる怖さー

    退職を決めた日のことー10年の誇りと”ただの人”になる怖さー

    仕事復帰して初めて、

    育休前と同じような達成感を得られた日があった。

    2人出産して、4年ぶりの社会復帰だった。

    ブランクもあった。

    子供は小さい。

    正直、毎日いっぱいいっぱいだった。

    だからこそ、

    あの日の達成感は特別だった。

    「ああ、まだ私はできる」

    久しぶりに、仕事の自分を取り戻せた気がした。

    嬉しくて、気持ちよくて、

    このまま頑張ろうと心に決めた。

    その夜、子供たちを寝かしつけた後

    布団の中でスマホを握りしめながら、

    ヴァンクリのオニキスのピアスをポチッと購入した。

    勢いだった。

    でも、ただの勢いじゃなかった。

    オニキスは

    「揺るがない意志」や、「自分軸を強くする」という

    意味があると知っていた。

    復帰して4年ぶりに感じた達成感。

    やっと取り戻せた”仕事の自分”。

    その自分を、

    ちゃんと肯定したくて。

    少し大げさかもしれないけれど、

    あのピアスは「これからも私はブレずに頑張る」という

    自分への宣言みたいなものだった。

    だから、数日後に退職を決めることになるなんて、

    あの夜の私は想像もしていなかった。

    でも今思う。

    あの時オニキスを選んだのは、

    仕事を続けるためじゃなく、

    ”自分の軸を取り戻すため”だったのかもしれない。

    方向性が変わっただけで、

    意志はちゃんとそこにあった。

    次の日の出来事。

    保育園の行事で、

    上の子の気持ちが大きく揺れた。

    その姿を見た瞬間、

    「私は子どもたちとちゃんと向き合えていないんじゃないか」

    と、心がざわついた。

    周りの目。

    焦る私。

    うまく声をかけられない自分。

    その瞬間、心の奥で何かが崩れた。

    達成感の余韻は一瞬で消えた。

    週明け、

    追い討ちをかけるように、

    ひょんな行き違いで大好きな部長に怒られてしまった。

    ショックだった。

    でも、同時に気づいてしまった。

    私は、

    仕事も子育ても、

    どちらも中途半端な気持ちでやっていたんじゃないかと。

    子育てはやめられない。

    だったら、

    私が選ぶのはどっちだろう。

    退職を決めた。

    次の日、支店長に泣きながら話した。

    仕事が好きだと知っている支店長は、

    何度も聞いた。

    「本当に後悔しないのか?」

    私は泣きながら答えた。

    「後悔はしないと思います。でも、あの時は楽しかったなって、これから何度も思い出すと思います。」

    子育てと仕事の両立は、

    私には限界だった。

    支店長は、大泣きする私にこう言った。

    「仕事を辞めたからといって、あなたの価値がなくなるわけじゃない」

    その言葉は、今でも思い出すたびに胸が熱くなる。

    背中を押してもらった。

    でも、正直に言うと、

    一番怖かったのはそこじゃない。

    10年全力で頑張ってきた大手企業を辞めること。

    肩書きも、実績も、評価も、

    全部手放すこと。

    私は、”ただの人”になるのかもしれない。

    それが怖かった。

    仕事は誇りだった。

    不妊治療をしながら、

    それでも続けてきた仕事だった。

    母になる前の自分を支えてくれた場所だった。

    それを、自分の意思で終わらせる。

    怖くないわけがなかった。

    辞めると決めてから、辞める日までが一番しんどかった。

    最後の日は、不思議なくらい実感がなかった。

    本当に終わったのか、

    まだ明日も出社する気がした。

    退職後の1ヵ月は、無気力だった。

    達成感も、肩書きもなくなった。

    私は空っぽになった気がした。

    でも、1ヶ月経った頃、

    ふと静かに思えた。

    やめてよかった。

    あの選択は、逃げじゃなかった。

    私は、

    仕事を捨てたんじゃない。

    母としての自分を選んだだけだった。

    そして今、

    私はもう一度、自分の人生を設計し直している。

    ゆるく、でも賢く。

    仕事を辞めても、

    私の価値はなくならない。

    あの日、私は何かを失ったのかもしれない。

    でも同時に、

    自分で選ぶ人生を、はじめて本気で手に入れた。

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